再会切符

再会切符 -8-

Written By: admin - 12月• 30•11

黙って聞いていた彼は、そっと私の頬を触り「それなら、もっと早くに連絡してこいよ」と呟いた。
「お前のこと凄く好きだった。今の彼女の事は大切だけれど、今までの人生の中で、一番キラキラした思い出が多いのは、お前と一緒にいた時だって今でもはっきり言える」
そして私の手を握ると、「相変わらず冷たい手をしてるな」って笑って自分のスーツのポケットに入れた。
「お前の手をまた温めてくれる奴が絶対に現れる。だから、絶対に俺よりも幸せになれ」
そう言って、握った手にギュっと力を入れた。
手のひらの感触も、ぬくもりも付き合ってた頃とまったく変わらないね。
ちょっとごつごつしたところもまったく一緒で、なんだか私は妙に安心した。
ただ違うことは、この手はもう私のものではないということ。
駅に着き握った手を外すと、彼は「じゃあな」と言って電車を降りた。
一度も振り返ることなく改札口を出ていく彼の姿を見ながら、私はあの言葉を思い出していた。
『結ばれる運命なら、また再会ができる』
彼は同級生だった子と再会して、そして婚約した。
確かに、彼の言うとおりだったね。
きっとその彼女が「運命の人」だったのだろう。
「もっと早くに連絡してこい」と呟いた彼の真意はわからない。
でも、もし別れた後すぐに「後悔してる」って連絡していたら、私の隣には今も彼がいたのかもしれない。
ねえ。
「幸せになれ」っていう約束、私ちゃんと守ってみせるから。
だから、またいつかどこかで会うことができたら、その時は、本当に「久しぶり」って笑顔で声をかけるね。
きっとこの再会は、神様が運命を感じさせるためのものじゃなくて、いつまでも立ち止まっている私のために用意してくれたものなんだろう。
カバンの中から出した乗車切符を、そっと手帳にしまった。
コレは今日の「再会切符」として大事に持っておこうと思う。

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>