再会切符

Archive for the '恋愛' Category

再会切符 -1-

 「もし結ばれる運命なら、また再会できる日が来る」
この言葉は、高校生時代に付き合っていた彼が私に言ったセリフ。
10年以上も前になるけど、いわゆる「元カレ」と別れ際に話した最後の会話だった。
高校生の私たちの恋愛は、今考えると本当に子供の恋愛だったけど、それでも「子供」なりに一生懸命だった気がする。
今みたく打算的でもなく、全てにおいて純粋で、キラキラしていたものがあった。
一生続くような気がしていた時間を、私のワガママで壊してしまったけど、私から別れを切り出したとはいい、私は彼が一番大好きだったと思う。
彼と別れて長い年月が過ぎた。
私も世間で言われる「熟れた女」世代になった。
彼と別れた後も、彼氏と呼べるような人もいたし、いくつかの恋愛も経験してきたけど、私はとうに記憶の奥底にしまっておいたはずの元カレの言葉を、思い出させる運命的な出来事が訪れるとは、私にも想像することができなかった。
ある日、私は会社の取引先での打合せを終え、電車に乗ろうとホームで待っていた。
そして、自分が乗らなければいけない電車が到着し、ドアが開く。
こんなことは、日常の行動の一つであったため、別に顔をあげていなくても、「カンカク」で席に座るまでの一連の行動ができた。
真昼間の電車内は、ラッシュ時と違いガラガラ。
席は探さすことなくすぐ座れる。
私は乗り込んだすぐ近くの席に腰を下ろした。
私は、ふと顔をあげた。
その瞬間、私は身動きが取れず、言葉を発することもできなくなってしまった。
なぜなら、私の目の前に、18歳とのきに別れた「彼」が座っていたから。

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再会切符 -2-

彼は、うつむいていたので、私が座っていることに気付いていない様子。
もちろん、うつむいているのに「彼」だと気付いた私もスゴイことかもしれないけど、彼はうつむいた姿も、雰囲気も、付き合っていたころとまったく変っていなかった。
 『運命なら、また会うことができる』
彼が私に言った言葉が甦った。
当時は笑い飛ばしていたけど、今になって、コレがその「運命」というやつなのかも・・・という錯覚にも陥った。
「ねえ・・・。」
そう言葉をかけようとも思ったが、私は言葉をかけるほどの勇気を持つことができずにいた。
それよりも、「現在」の私を見て、ガッカリされるほうの恐怖心の方が強かったのだ。
このまま、私がいることに気付かずにいてほしい。という気持ちと、私の存在に気が付いてほしいという願望が、私の中で渦を巻いている。
いい年した女が、こんなことに悩むなんて、ちょっと変な感じがしたが、こんな気持ちになることを、私はすっかり忘れていたのだということにも気付かされたのだった。
私も年を取ったが、彼ももちろん年をとっている。
彼も結婚していても、もちろん子供の一人や二人いてもおかしくない年になっている。
私は、無造作に組まれている彼の手に目をやった。
そう、「結婚指輪」をしているかを確認したかったのだ。
彼は結婚指輪をしていなっかた。
あれ? 今私、すごくホッとした・・・。
電車に揺られている間、私は彼との久しぶりの時間を楽しんだ。
気付かれてもいないし、会話さえもしていない。
でも、例えそんな状態であっても、何だか当時に戻れたみたいで、心が癒されていた。

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再会切符 -3-

しかし、現実は過酷なもので、そんな居心地のいい時間をずっと過ごせるわけではない。
とうとう自分が下りる駅が近づいてきた。
きっとものの10分ほどで着いてしまう。
どんなに会いたいと思っていても会えなかった彼と、こんな奇跡に近い偶然で再会できた。
そして、今声をかけなかったら、きっともう二度と会うチャンスも、会話をする機会も訪れることがないだろう。
私は立ち上がり、彼に背を向けて手すりに軽くもたれた。
ああ、もうすぐ駅に着いてしまう。
どうしよう。
どうしよう。
 
「もし結ばれる運命なら、また再会できる日が来る」
ねえ、アナタは確かにそう言ったよね?
私はドアに映る彼を見て問いかけた。
神様。これは「運命」なのでしょうか・・・?
ドキドキと久しぶりに高まった心臓の音が、まるで彼にも聞こえてしまいそうなくらいの高まりをみせていた.…。
『次は、芸大前。芸大前』
アナウンスが流れ、ブレーキをかけた電車がゆっくりと停車姿勢に入る。
もうすぐで私が降りる駅に着いてしまう。
振り返って、「久しぶり」って言ったら、彼は驚くだろうか。
それとも、笑ってくれるだろうか。
電車が止まり、扉が開く。
……でも、私は降りることができなかった。
だって、これを逃したら、もうきっと二度と彼に会えなくなると感じたから。
もう少しだけでいい。
久しぶりの再会を楽しんでいたい。
例え、彼と話ができなくても、傍にいる「今」を感じていたいから……。
「かえで?」
突然、自分の名前を呼ばれた私は、ビックリして持っていたカバンを床に落としてしまった。
カバンの口が開いていたために、中に入れてあった口紅がコロコロと床を転がっていってしまう。
慌てて口紅を追いかけたけど、口紅は彼の足元にぶつかって止まった。
足元に転がってきた口紅を広いあげ、私に渡す彼。
まともに顔が見れなくて、少しうつむきながら「ありがとうございます」とペコっと頭を下げて口紅をもらおうとすると、もう一度彼は私の名前を呼んだ。

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